人類進化の果て


人間はこの後どこへ往くのだろう!
 今のままの貨幣経済が続けば、社会は益々行き詰まり状態が深刻化してゆくことになる。
 国内だけで毎年三万人以上の人が自殺するような社会は、既に崩壊過程にあると云うべきである。
 そして 諸外国に於いても同様に自殺者は増加傾向にあるという。

 特に日本の社会に於いては、富裕層と下層階級の格差の増大の問題が著しい、日本の場合富裕層は権力者階層と重なり合って存在している、この階級格差は徐々に固定化する傾向にあり、下層階級及び上層階級に於いても権力抗争に敗れたり又落ちこぼれとなった部分が前途に絶望し、且つ社会そのものに嫌気がさして自殺することとなる。
 この固定化した富裕層及び権力者階層は、今では世襲となり身分制度に近いものになっている。
 下層階級に生まれた者が上層に所属するためには、非常な努力と金銭が必要でありその上に上層階級に相応しい考え方をも身に付けなければ仲間入りは許されず、運良く仲間入り出来たとしても成り上がりに過ぎず世襲の富裕層とは成れない。

 こうなると、江戸時代と同じような社会となり窮屈で発展性が無く、下層階級を徹底的に断圧しない限り暴動状態となり、社会は崩壊への道をたどることとなる。
 ただ現在のように、昔に比べると過剰生産力が格段に発達した社会に於いては、ある程度の歪み吸収力があり、実際に暴動が起こり社会が形として崩壊するまでには、かなりの時間が掛かる。

 社会の歪みが積み重なっている現在から、社会体制の崩壊の最後の過程である暴動が実際に勃発するまでの間に、まず人々にそしてその精神に崩壊が起こる。
 子供達に「人生とは金と付随する身分を獲得することが目的であり全てだ」と教え込むような社会は、滅びに向かって突き進んでいるのと同じであり、その結果として金と身分を獲得出来なかった者達の、生きる目的を見失わせ、生きる意欲まで失った働かない若者達を大量生産することとなった。

 貨幣に付いて考えたり理解しようとした時、正常な人間の精神はまず拒否反応を起こす。なぜなら貨幣経済制度は人間同士の不信感を根底に置いて成立している制度であるからだ。
 小さな子供を観察して視よう、親が居ない場合子供同士は直に仲良く為り、本当に友達に為った場合は好きな食べ物も分け合うようになる、そこには他人に対する不信感は発生しない、それは他人に騙され裏切られたか、又は親に言われた場合に発生するものだからである。
 人間は群れを作る関係上、自らと他との関係が最優先事項として精神に刷りこまれている、本来そこには群れを構成する各員に対する信頼があるだけで不信感は無い、しかし複雑な社会生活と人間同士の不信感を助長する貨幣の存在により、現在の社会に於いては他人を無条件で信頼する人間が生きて行くのは不可能だ。

 そして子供は貨幣の使い方を覚え、その意味を理解しようとする過程に於いて、本来自らの中にある他人への信頼感を圧殺した上で、他人への不信感を身に付けなくてはならない、この道程の初期の段階で人間は正気を失い狂気に至る芽が発生することとなる、現在の矛盾に満ちた社会生活で他に要因が加われば狂気が進んだ状態つまり精神異常となる。
 「金が全て」の状態が段々意味を強めながら長期間続いた場合、人間はその方向への進化が進むこととなる、物欲と性欲が異常な程昂進し、常に他人からの脅威に怯えると同時に他人の持ち物を隙を窺ってあらゆる手段を持って奪おうとする、結果として人々は男女・家族の内外を問わず常に他人を疑い怯え、何らかの意味で弱みの有る人は周りに金と命を奪われる、そしてより狡賢くより疑い深くより品性下劣な者のみが生き残ることとなる。

 現在の殺伐とした犯罪が頻発しているこの時点が、既に前記の状態が進行している結果ではあるが、真面目で正直・気が弱くて誤魔化しが出来ない系統の人々は次々と滅ぼされて往く。
 人類の人口構成として正常ならば3割は居る筈の真っ当な人間達、この人達が社会の矛盾を吸収し社会の安定度を保つ安全弁の役割を果たしている、これらの真っ当な社会の基盤たる真っ当な人達が年々減少し続け、現在では2割位となっているため、社会は益々不安定化の道を辿っている。

 上記の如き不安定化要因が重なり合い次の段階へ進む時、人間同士・地域間・国家間が互いに疑心暗鬼に陥りその結果として戦争が勃発する。
 そして世界的にこの状態が続き一定の段階に達した時 世界は爆発する その時人類70億の人口の内数%のみが生き残り、前記に記したように又新たに原始時代から再出発することとなる。
 この場合 人類の進化は停止状態が続き、謂わば進化の円環の中に閉じ込められた形となる。

 しかし 前項の爆発が起きなかった場合、人類は最悪の事態を迎える、前記の真っ当な人達がまず絶滅し、社会の基盤が崩壊する。
 生き残るのは精神的に動物の段階に迄退化した、最早人間とは呼べない存在「獣人」達だけであり、その社会は荒みきった凄まじい社会となるだろう、こ前段階的モデルは現在の地球上にも数カ国存在する。
 この場合の地球は、無限の可能性を秘めた人間の精神能力を発展させる余地も無く、その精神能力をただひたすら他人を陥れて自らの奴隷と化し、他人の犠牲の上に自らの安楽な生活を築こうと画策することにのみ使おうとする「獣人」達の世界となる。

 彼等「獣人」達の世界は、必然的にお互い同士の殺し合いの場と成り、人口は徐々に減少する方向に向かうであろう、しかしその殺戮の場を生き抜いた「獣人」は新たな「進化」を果たす。
 人間の精神能力は巨大であり、その能力を間違った方向に使った彼らはその反作用を受ける、彼らの「進化」は「獣人」としてふさわしい形と成り、例えようもなく邪悪なものとなろう、昔の悪魔や鬼などが可愛く思える程に。

発言者-筒井孝男;2004-12-3 ご意見及びご連絡先
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